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申請書の基本的なことを理解すれば未知の問題にも対応できる
案件ごとに申請書の様式を覚えていく方が多いと思いますが、申請書を書くにあたって基本的なことを理解すれば覚えるのも楽になるし忘れにくくなります。平成26年度本試験では、建物の書式で通達(平成21年2月20日民二第500号民事局長通達)にない建物表題部変更・合併登記が出題されましたが、申請書のルールを守って説明しうるように書けば点数が取れているようです。
絶対に知っておくべき申請書のルールを確認していきましょう。
そもそも申請書って何種類あるの?
解答として求められる申請書の様式が何パターンあるか、即座に答えられますか?おおまかに分けると、土地1種類、建物3種類、区分建物1種類の計5種類です。つまり、建物関連の書式で出てくる答案用紙は4種類になるわけで、答案用紙によってある程度「登記の目的」を絞り込んで想定することができます(あくまで可能性の話とお考えください)。登記の目的を絞り込むことができれば、余計なことは考えずにストーリーを想定しながら問題文を読むことができ、それだけで有利になります。解答用紙が配られた時点で勝負は既に始まっているのです。
土地の申請書について
土地の申請書様式は1種類です。これは迷う余地はありません。
建物の申請書パターン1について
一番シンプルな建物の申請書です。いわゆる表題・変更等の様式です。この様式の解答用紙が出てきたら、下記の登記を想定しましょう。
建物表題
建物滅失
建物表題部変更
建物表題部更正
建物表題部変更・更正
表題部がない建物同士の合体
現実的には、滅失のみとか更正のみの出題はあまり無いでしょう。
建物の申請書パターン2について
いわゆる分割・合併等の様式です。建物の個別入力欄に地番、家屋番号、主である建物又は附属建物の記載欄があるのが特徴です。この様式の解答用紙が出てきたら、下記の登記を想定しましょう。
分割
合併
分棟・分割
分割合併
及びこれらと変更・更正登記を一の申請でする登記
建物の申請書パターン3について
いわゆる合体の様式です。1.所有権登記特定事項欄、2.存続登記特定事項欄は、所有権の登記が関与する場合だけ付きます。この様式の解答用紙が出てきたら、下記の登記を想定しましょう。
表題部のみある建物と表題部がない建物の合体
表題部のみある建物同士の合体
表題部のない建物と所有権の登記のある建物との合体
表題部のみある建物と所有権の登記のある建物との合体
所有権がある建物同士の合体
合体の登記のうち、表題部が無いもの同士はパターン1を使い、それ以外は全てこのパターン3を使います。ただし、所有権の登記のからまないものは、「1.所有権登記特定事項欄」以下は不要なため省略されます。
区分建物の申請書について
区分建物としてスタートする登記
建物区分登記
建物表題部変更(非区分建物が区分建物化するときのみ)
区分建物としてスタートする登記はすべてこの様式を用います(つまり、区分建物が非区分化する場合もすべてこの様式を用います)。
また、建物表題部変更のうち、区分建物化する場合もこの様式を用います(増築、接続等を原因とする非区分建物の区分建物化)。この場合の登記の目的はあくまで「建物表題部変更登記」であり、先頭に「区分」をつけませんので注意しましょう。
登記原因及びその日付の基本形をマスターしよう!
申請書を書くコツは、登記原因及びその日付の基本形を覚えることです。基本形を覚えていれば、それが指針となって全体をどのように書けばいいのかが自ずと見えてきます。まずは骨格となる基本形をしっかりマスターし、細かいところや例外などはあとから肉付けしていきましょう。
土地表題登記
不詳
年月日公有水面埋立
年月日海底隆起
土地分筆登記、建物分割登記、建物分割合併登記
に
から
土地合筆登記、建物合併登記
に
を
土地分合筆登記
に一部合併
から分割して に合併する部分
から一部合併
土地地目変更・地積更正登記
②年月日地目変更
③錯誤
建物表題登記(いずれも未登記の合体)
年月日新築、年月日新築、年月日合体
建物合体登記(片方が未登記の合体)
年月日新築の建物と年月日合体
年月日 家屋番号、年月日新築の建物を合体
建物合体登記(上記以外)
と
と
を
建物分棟・分割登記
年月日分棟、一部取壊し に分割
年月日分棟 から分割
建物区分登記
に
から
から
年月日敷地権
区分建物区分登記
を
から
③年月日変更
区分建物区分合併登記
を
に
③変更
区分建物区分合併登記(非区分建物化するとき)
と
を
(従前の敷地権のみ記載)
共用部分である旨の登記
年月日規約設定共用部分
団地共用部分である旨の登記
年月日団地規約設定 の団地共用部分
区分建物表題登記(共用部分廃止)
年月日共用部分の規約廃止
区分建物表題登記(団地共用部分廃止)
年月日団地共用部分の規約廃止
⇒ 暗記用ページへ
登記原因及びその日付の番号冠記は登記記録を意識しよう
登記原因及びその日付欄になされる番号冠記って、どういうときにされるのか理解していますか?
これが理解できていたら、申請書の骨格が見えてきて、ミスも飛躍的に減っていきます。大事なところなので再確認しましょう。
番号冠記される条件は、
(1)申請前と申請後に登記記録が存続し、
(2)変更が生じている箇所がある場合に
(3)申請後の行に番号を冠記する
ということです。
「(1)申請前と申請後に登記記録が存続」について
申請前に登記記録が存在しない表題登記、申請後に登記記録が閉鎖される滅失登記は当然に冠記される余地はありません。また、合体の登記(合体後の建物の表題登記及び合体前の建物の表題部の登記の抹消)や、建物区分登記は申請によって従前の登記記録が閉鎖され、新たな登記記録が作成されるため、(1)の要件を満たさず番号冠記されません(区分建物区分登記は従前の登記記録が存続するため冠記されます)。
ここで注意事項ですが、分割登記、建物区分登記、合併登記、分割合併登記は、番号を冠記しない取り扱いとなっています(準則96条~100条)。
「(3)申請後の行に番号を冠記する」について
例えば10番という地番の土地を分筆して10番1と10番2という土地になった場合、申請前の行と申請後の行に分類すると、
10番(申請前)
10番1(申請後)
10番2(申請後)
という並びになります。ここで、10番の登記記録はそのまま存続して地番が変更されて10番1になります。10番2の登記記録は新しく作成されます。したがって、番号冠記すべきなのは、存続している10番 → 10番1の登記記録で、申請後の行である10番1のところに冠記することになります。先にマスターした基本形も駆使して完成させましょう。
①地番 | ②地目 | ③地積 | 登記原因及びその日付 |
---|---|---|---|
10番 | 田 | 200 | |
(A)10番1 | 100 | ①③10番1、10番2に分筆 | |
(B)10番2 | 田 | 100 | 10番から分筆 |
合筆の登記の時も同様に、
11番(申請前)
12番(申請前)
11番(申請後)
となっており、12番は登記によって閉鎖されます。存続するのは11番 → 11番の登記記録なので、申請後の11番の行に冠記することになります。
①地番 | ②地目 | ③地積 | 登記原因及びその日付 |
---|---|---|---|
11番 | 畑 | 100 | |
12番 | 畑 | 100 | 11番に合筆 |
11番 | 畑 | 200 | ③12番を合筆 |
なぜこのような取扱いになっているのかは、登記完了後の登記記録を見れば理解できます。登記申請書というのは、登記官がその書類を見て完了後の登記記録を作成するための資料です。東京法経学院の申請マニュアルには登記申請後の登記記録が全て載っているので、確認しながら勉強することが大切です。
土地地目変更により地積表示が変わった場合の冠記について
例えば畑(120㎡)が宅地(120.45㎡)になった場合、これまで小数点以下切り捨てられていた地積が表出するため、見かけ上地積が変わります。この場合も③冠記が必要なので注意しましょう。
要注意!土地地目変更・地積更正登記
上の例外になるのですが、地積更正が絡んで土地地目変更・地積更正登記となるとややこしくなります。例えば畑(120㎡)が宅地(210.45㎡)になった場合、まず地目変更を先に書いて、「②平成26年4月1日地目変更」とします。ここでは③冠記しません。次に「③錯誤」とします。覚えてないと間違うので覚えましょう。ポイントは
地目は先に書く
地目に③は冠記しない
ということです。「目先の利益に実入りなし」(地目が先、3は入らない)と覚えましょう。
②平成26年4月1日地目変更
③錯誤
変更登記の時は変更前 ⇒ 変更後の順で書く
変更登記の時は変更前 ⇒ 変更後の順で書きます。更正登記の時も同様です。当たり前といえば当たり前ですが、ここでは例外を覚えましょう。
区分建物の例外
区分建物で一棟の建物の名称を記載したときは、一棟の建物の構造及び床面積を記載することを要しない(登記令3条8項ヘ、ト)ので、一棟の建物の表示が変更後のものだけになります。
附属建物がある場合の例外
附属建物がある場合は、主である建物を優先的に書き、
主である建物(変更前)
主である建物(変更後)
附属建物(変更前)
附属建物(変更後)
とします。
分割・合併登記の書き順について
分割前を全て書き終わってから、分割後を書きます。
例えば、家屋番号10番の主である建物、附属建物符号1が分割登記によりそれぞれ別個の10番の1、10番の2という建物になった場合、
1行目:主である建物(分割前)
2行目:附属建物符号1(分割前)
3行目:10番の1(分割後)
4行目:10番の2(分割後)
という並びになります。合併も同様に、
1行目:11番(合併前)
2行目:12番(合併前)
3行目:主である建物(合併後)
4行目:附属建物符号1(合併後)
とします。
土地の分筆、建物の分割・区分登記には符号を忘れない
土地の分筆、建物の分割、建物の区分登記の場合には、分筆後、分割後、区分後の符号を付す必要があります。符号は土地、非区分建物の様式のときは地番欄に、区分建物の様式のときは家屋番号欄に記載します。
なお、建物の分割や区分登記において作成する建物図面及び各階平面図には、タイトル部分に作成する建物に対応する符号を付さなければなりません。非常に忘れやすいポイントなので注意しましょう。
表題登記で相続案件のときの注意事項
原則:相続人が直接自己名義で表題登記をする
こちらが原則です(不動産登記法47条1項)。添付書類に相続証明書の記載を要しません(所有権証明書に含まれるため。)。
例外:相続人が被相続人名義で表題登記をする
例外として、物件に被相続人名義で抵当権が設定されているなどの事情がある場合や、区分建物の場合は被相続人名義で表題登記することになります。添付書類に相続証明書が必要です。所有者が被相続人なので、できあがってくる登記記録も当然被相続人の名前が載り、申請時に住所が必要になります。
「所有者 住所 亡 ◯◯◯◯」と記載しましょう。
忘れやすいものを認識してケアレスミスを防ぐ
個別に小さな空欄のある答案用紙の場合は忘れることはないのですが、大きな空欄だけ用意された場合は記載漏れしないよう注意しましょう。
登録免許税
代位原因
登記識別情報を提供できない理由
などは忘れやすいので、その要否について再確認するクセをつけましょう。
『不動産表示登記 申請マニュアル』を有効活用しよう!
東京法経学院の申請マニュアルは申請書をマスターするのに最高の教材です。これを最大限利用するためにこちらをご覧ください。
⇒ 不動産表示登記申請マニュアル〔改訂三版〕
⇒ 『申請マニュアル』の重要様式を抽出して勉強法を検討してみた